本書には、ICT(情報通信技術)に関するビジネス、知的財産、知財戦争、
企業の知財戦略の実例、知財戦略の一般論の説明が掲載されています。
本書は、全体的にICT知財戦略の基本をわかりやすく説明しているため、
初学者の方におすすめです。全6章で構成されているが、
特に第5章はICT知財戦略に関する基礎知識について説明しており、
読む価値が高いと思う。
印象に残ったポイントは、下記7点です。
(1)ICTを支える技術については、1970年代半ば頃にはハードウェア技術が
その多くを占めていたが、現在ではソフトウェア技術が
その多くを占めている(本書44、45頁参照)。
(2)米国グーグル社は起業からの歴史が浅く、十分な特許ポートフォリオを
構築する時間的な余裕がなかったことにより知財戦略的な遅れを
とっており、それを他社からの特許の買収という形で
戦略的に対抗する手段を採用している(本書141頁参照)。
(3)韓国サムスン電子社は米国アップル社同様、
デザインに重点を置く企業で、技術開発とデザイン開発を
連携させた組織づくりをしている(本書143頁参照)。
(4)研究開発によって創造された知的財産を権利という形で保護し、
知的財産権として保護された知的財産を活用して利益を上げ、
その利益を元にさらに研究開発を行い、「創造→保護→活用」の
サイクルを回してスパイラルアップさせていくことが、
ICTビジネスの事業経営にとって重要である(本書147頁参照)。
(5)オープンにすべき特定の技術についてはオープン戦略を採用し、
クローズにすべき特定の技術はクローズ戦略をとることで、
2つの戦略のメリットを組み合わせた相乗効果が生まれ、
事業収益を最大化させることができる可能性がある(本書172頁参照)。
(6)知財戦略における標準化の方法には、デジュール標準(公的標準)や
デファクト標準(事実上の標準)を利用したものがあるが、
デジュール標準の一例として
写真フィルム感度(ISO100、ISO400等)があり、
デファクト標準の一例としてWindowsがある(本書178、179頁参照)。
(7)特許訴訟が決着するまでの間、顧客企業は敗訴した場合の
リスクへの懸念を払拭できず、より安心して使える技術を採用するのが
一般的であるため、訴訟では勝利しても、裁判の間にビジネスでは
負けてしまうという状況に陥りかねない(本書204頁参照)。
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