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本書には、特許関係訴訟全般に関する説明の記載がありますが、
特に特許権侵害訴訟については詳しい説明が掲載されています。

本書は、基本知識だけではなく応用知識を多く記載しているため、
特に実務者の方におすすめですが、初学者の方にもおすすめです。

特許関係訴訟の手続きで必要となる書面(訴状、答弁書等)の記載例が
多くあること、実際の裁判においてはどのような点が考慮されるかについて
説明していること、当事者系の裁判で主張すべき抗弁の内容を
掲載していることが大変よかったと思う。

また、序章および第1章〜第5章で構成されていますが、特許権侵害訴訟の
手続的論点・実体的論点および国際化との関係を説明している
第1章〜第3章は読む価値が高いと思います。

なお、弁理士試験合格者の方は、すでに学んだ内容の記載が
相当程度あるため、そうした記載は読むのを省略してもよいでしょう。

印象に残ったポイントは、下記9点です。

(1)特許関係訴訟には、侵害訴訟、審決取消訴訟、職務発明対価請求訴訟、
   契約関係訴訟、登録関係訴訟等がある(本書6、7頁参照)。

(2)訴訟上の和解が既判力を有するか否かについては、無制限肯定説、
   制限的肯定説、否定説と学説は分かれている(本書111頁参照)。

(3)ソフトウェア関連の特許権やインターネットがからむ
   著作権については、複数主体が関与する侵害の形態が想定され、
   また直接の侵害行為を現実に行った者以外の者に責任を
   負わせるべき場合があり、しかも、グローバル化、
   ネットワーク化によって、そのような事態が、
   国境を超え国際的な様相を帯びてきた(本書123頁参照)。

(4)必須宣言特許を保有する者による損害賠償請求は、
   FRAND条件でのライセンス料相当額を超える部分では
   権利の濫用に当たる(本書249頁参照)。

(5)米国では、部品特許でも例外的に製品全体の販売を誘因する強さが
   ある場合に限り、製品全体が特許法102条1項本文にいう
   「侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たるとする
   「エンタイアマーケットバリュールール」という概念があるが、
   最近では米国でもこれを容易に認めるべきではないとされているという
   (本書257頁参照)。

(6)弁護士費用の額としては、単に損害額の1割というのではなく、
   差止請求等の有無も考慮されており、近時高額化の傾向が見られる
   (本書267頁参照)。

(7)現在では、国際的に見ても、外国特許権の侵害訴訟につき、
   登録国の専属管轄と解することなく、国際裁判管轄を肯定する見解が
   有力である(本書287頁参照)。

(8)知的財産権分野の専門委員が約200名任命されており、
   出身母体としては、大学教授等の高等教育機関の教職員が約65%、
   公的研究機関や民間企業の研究員が約20%、弁理士が約15%である
   (本書398頁参照)。

(9)請求項ごとに権利者が異なるような公示は現行制度の下では
   できないため、立法論としてはともかく、現段階では、請求項ごとに
   発明者が異なる場合には、共有にするしかないと思われる
   (本書427頁参照)。

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